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第四回「労働の選択、性教育とジェンダーについて」 

更新日:2024年12月3日

2024年11月30日 土曜日

参加者:3名


ジェンダーロールを乗り越えようの会 第四回

「労働の選択、性教育とジェンダーについて」



労働とジェンダー


「ママもパパも育児の主役」


家庭において、「主なケア提供者は母親」という意識が根強く残っており、多くの母親が仕事と育児の両立に苦労しています。一方で、父親が積極的に育児に関わろうとしても、子どもから「お母さんじゃなきゃ嫌だ」といった反応が返ってくる場合があります。このような子どもの感情を「自然なもの」として受け入れるべきなのか、それとも、社会が母親に求める役割が無意識のうちに子どもに顕在化しているのか考えさせられるところです。


「パパっ子」という言葉の使われ方についても議論がありました。たとえば、「パパっ子」と言われる子どもは少数派であり、母親を求める子どもが「普通」と見なされる背景には、社会的な価値観の影響が大きいのではないか、という意見です。「母親がいなければ子どもを安心させられない」という固定観念が、家庭内で「母親が育児を担い、父親が仕事をする」という役割分担を強化してはいないでしょうか。子どもに多様性があるように、良しとされている育児は一つではないのです。


重要なのは、「母親か父親か」という二項対立にとらわれるのではなく、働く母親や育児に関わる父親がともに尊重され、互いの選択を支え合える家庭環境を整えることです。「家にいる母親」という役割を、社会が押し付けたものとしてではなく、自分の意思で自分らしくいられるために、家にいる選択をする母親がいるように、「家にいる父親」を自由に選択できる社会の整備が求められます。それぞれの家族にとっての最適な選択が、性別に基づいた役割分担に基づくのではなく、自分で選択できるかどうかが本質的な課題と言えそうです。


「ピンクカラー」


ケアワークが女性に偏っている現状は、社会的な課題とされてきました。オフィスワークが「ホワイトカラー」と呼ばれるのに対し、ケアワークが「ピンクカラー」と日本では表現されることがあります。「ピンク」を女性を指す色とすることは性別を固定的に捉える考え方であると同時に、ケアワークは女性が担うべき仕事という偏見もこの言葉には込められているようです。


男女共同参画が進む中で、1987年に施行された「看護婦等の職務に関する法律」によって、看護婦、保健婦、助産婦といった女性を前提とした職名が改正され、性別に関係なく使用できる「看護師」「保健師」「助産師」といった名称が採用されました。しかし、産婦人科において男性が分娩介助を行うことに抵抗を感じる女性も多く、「母親たちが助産師の性別を選べる権利を持つべきだ」とする署名運動が起こるなど、名称変更だけでは解決しきれない課題もありました。現在では、助産師という職業は男性が就くことができない職種です。 



性教育の課題


「分断された性教育の現状」


現在の性教育には、性別による分断が存在します。たとえば、生理に関する授業が女子だけを対象に行われる場合がありますが、このような授業形態は、生理が「隠すべきもの」や「恥ずかしいもの」として扱われる原因となりかねません。本来、性教育は命や生き方の本質に関わるものであり、全ての人が共有すべき知識を公平に学ぶべきです。


また、学校で性について教える場面では、生徒同士が性に関して茶化す行動が見られることがあります。たとえば、学校の図書館で性に関する本を広げたまま放置するイタズラが行われたり、虫の交尾を見て「卑猥だ」と揶揄したりするようなケースです。こうした行動は、性そのものを「笑いの種」や「恥ずべきもの」として扱う文化を助長し、性教育を学ぶ環境そのものを阻害します。性についてオープンに話せない雰囲気が、さらにタブー意識を深めてしまうのです。


日本の学校における性教育には、「歯止め規定」という制約が存在します。この規定により、セックスそのものや性的同意について深く教えることが制限され、包括的な性教育が難しくなっています。一部では、「セックスを詳しく教えると、早熟を助長してしまうのではないか」という懸念が背景にあり、そのリスクを「歯止め」する規定があります。しかし、このような規制があることで、性に関する具体的な知識を得られない子どもたちが、自分たちなりに性について学ぼうとする中で誤った情報を信じてしまったり、不適切な行動に及ぶリスクが高まると考えられます。


「家庭における性教育の役割」


性教育は学校だけでなく、家庭でも積極的に行われるべきです。しかし、性について家庭で話すことは依然としてタブー視される場合が多く、親自身が「何をどのように教えればよいか分からない」という課題もあります。性について親と直接話す経験のない子どもは、親も話題にできない程に性の話はタブーなのだと、性についての悩みを1人で抱え込んでしまいかねません。性についてオープンに話し合える家庭環境が整っていれば、子どもはより深い理解を得ることができます。


包括的な性教育とは、生理やセックスの知識を伝えるだけでなく、命の大切さや他者とのコミュニケーション、性的同意についても教えるものです。たとえば、「どんなに好きな相手でも、相手が拒否した場合はセックスをしてはいけない」という同意の概念をしっかりと伝えることは、性教育において重要です。また、幼少期から性に関する情報をフラットに伝えることで、性についてのタブー意識を減らすことができます。


性教育を進めるうえで、自分のフィルターだけで話を進めることは、多様性を軽視する結果になりかねません。たとえば、性的指向や性自認に関する知識が親や教師に不足している場合、子どもがLGBTQ+としての自分を認識しても、適切なサポートが得られない可能性があります。性教育は、個人の経験やフィルターを通してしか行うことができない側面があることを理解し、性についていろいろな人から教わったり、お互いに話したりすることができる環境作りが大切です。



今後の課題


今回の話し合いを通して以下の課題が見えてきました。


1. 家庭内での性別役割の固定観念を見直すこと


母親が育児を担い、父親が仕事をするという従来の役割分担の固定観念を取り払う必要があります。家族全員が互いの選択を尊重し支え合う環境を整えることで、多様な家族の在り方を実現することが課題です。


2. 包括的な性教育を実現するための制度改革


性教育における「歯止め規定」を見直し、包括的な教育が可能になるよう制度改革を進める必要があります。これにより、命の大切さや性的同意の重要性など、性に関する知識を誰もが平等に学べる環境を構築することが期待されます。


3. 多様性を尊重した教育・家庭環境の整備


性教育を学校だけに任せるのではなく、家庭でもオープンに話し合える環境を整えることが重要です。親や教師が自分のフィルターだけに頼るのではなく、多様な視点を共有し、子どもが性について自由に学び、話せる場を作ることが課題です。


今後もこの読書会を通して、性別や家族に関する価値観を広げ、ジェンダーにとらわれない自由な選択が認められていく社会が実現することを期待していきたいと思います。



まとめ:ダンシロウ





参考文献:


「ジェンダー論をつかむ」
千田有紀(せんだ ゆき)・中西祐子(なかにし ゆうこ)・青山薫(あおやま かおる)著

第3章 労働とジェンダー

第4章 教育とジェンダー


三名の著書によって執筆されたジェンダー論の基本的な枠組みを紹介する入門書です。本書は、ジェンダー秩序に関する理解を深める手掛かりとなるでしょう。「です・ます」調で書かれた親しみやすい一冊。

 
 
 

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