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第一回「育児におけるジェンダーロールについて」

更新日:2024年10月31日

2024年8月17日 土曜日
参加者数:3名

父親の育休が当たり前に?育児の理想と向き合って


最近、父親が育児休暇を取るケースが増えてきています。3日と短期間のものから1年と長期のものまで、今では父親の約半数が育休を取得している印象があります。これは喜ばしい変化ですが、父親たちがその期間中、母親とケアをうまく分担できているかどうかは、まだ疑問が残ります。
多くの父親が育休中に理想の親子関係を築くことを期待していますが、実際には、期待と現実のギャップに悩むケースが少なくありません。母乳育児など、生物学的に母親しか担うことのできないケアがあるのは事実ですが、それが家事や育児全般の負担を母親に偏らせる理由にはなりません。育児休暇制度は、こうした負担の不均衡を解消し、父親がより積極的に育児に参加できるようにするためのものです。父親が家庭進出するためには、夫婦で具体的な話し合いのもと、ジェンダーロールにとらわれないケアの分担方法を模索していかれたらいいのではないでしょうか。


「母親業」という言葉をどう考えるか?


母親が子どもに施すケアや育児を「母親業」と呼ぶことで、その役割を明確にし、他の人もその役割を担えるようにする意図がこの言葉にはあるのかもしれません。しかし、この言葉には、母親を解放する一方で、「やっぱり母親がすべきこと」という固定観念を強めてしまうリスクもあるのではないかと感じています。
例えば、男性の同性カップルが育児をする際、「母親がいないこと」が問題視されることがありますが、これは「母親」という役割が特定の性別に固有であると考える固定観念に基づいています。家事や育児を「家事労働」や「ケアワーク」と表現することで、家庭内のケアがより広く評価されるようになる一方で、こうした役割を特定の性別に限定する考え方はまだ根強く残っているようです。
もちろん、家事労働を専門職に任せるという選択肢もあります。プロの手を借りることで、家庭の負担を軽減できるのは確かです。しかし、だからといって、それだけで夫婦間のジェンダーに関する問題が解決するわけではありません。
例えば、保育士の方が男性だったとしても、家庭のケアを他の人に任せたからといって、伝統的なジェンダーロールが消えるわけではありません。専門職のサポートを受けることはとても重要ですが、それだけでは不十分です。ジェンダーロールを本当に乗り越えるためには、パートナー同士が「ケアワーク」のあり方を共に考え、協力し合うことが、ジェンダーロールを乗り越えた新しい「家事労働」を築く鍵だと思います。

育児は母親だけの仕事ではありません。父親や他の人たちも積極的に育児に関わるためには、ジェンダーに縛られずに皆がケアに関与することで、より豊かな家庭環境が築かれるのではないでしょうか。


価値観の多様化とケアの分担について考える


性の多様性が広く認められるようになり、それに伴って男女それぞれの価値観にも大きな変化が現れてきました。以前は、社会が押し付けてきた男女の役割に従うのが当たり前でしたが、今では個人の価値観が尊重され、人生の選択肢も広がってきています。

かつては、社会的な価値観と個人の価値観が同じ方向を向いていましたが、今ではその二つが異なる方向を向くことも増えてきました。例えば、家父長制とジェンダーの関係は根深く、長男の嫁が義理の親のケアを期待されることもありました。嫁が家庭の一員として認められるために、ケアを担うことが求められていたのです。社会の価値観と個人の価値観が一致していれば、そのケアワークに生きがいを持てるため、疑問を感じることなく親の介護ができる人もいます。
しかし、現代では社会の価値観よりも、個人の価値観を重視する人が増え、従来のジェンダーの固定観念に違和感を覚える人も多くなりました。これからは、ジェンダーに縛られない生き方が選択できる時代になりつつあります。ケアを誰もが分担し、みんなで支え合うことができる社会が広がっていくことを期待しています。


同性カップルの育児: 性別にとらわれない分担


同性カップルを「夫夫」や「婦婦」と表現することがありますが、こうしたカップルでは、育児のケアワークは平等に分担されているのでしょうか。同性カップルに「どっちが男役?」と尋ねる人もいますが、同性カップルが育児において、父親役や母親役といったジェンダーロールに沿った役割分担をしているとは限りません。
例えば、料理が得意な方が食卓を整える場合、それが「女役」というわけではありません。得意なことや不得意なことに基づいてケアワークを分担することは、性別に基づく「男役」「女役」とは関係ないのです。
夫婦関係でも、得意不得意をお互いに話し合い、適性に基づいて分担することが大切です。でも、たまにはそうした適性にとらわれず、お互いに自由にケアワークを助け合うことができる関係が理想的だと思います。


今後の課題


今回の議論を通じて、育児におけるジェンダーロールの問題は、単純に「父親も育児をすべきだ」と言うだけでは解決できなさそうです。
具体的には、以下の点が重要だと思います。

  1. 育児休暇の活用方法の再考: 父親が育休中にどのように母親とケアを分担するかについて、学び考える機会を設ける。単に父親の育児休暇の取得を促進するだけでなく、どのように育児に参加するかを話し合う機会を設ける。
  2. 「母親業」という言葉の再定義: この言葉を、母親だけの責任とするのではなく、社会全体で支えるべき役割として再定義することが求められます。これにより、家事や育児の分担が家庭内でより平等になることを目指します。
  3. ジェンダーバイアスの克服: 育児や家事におけるジェンダーバイアスを克服するためには、教育や啓発活動が不可欠です。家庭内だけでなく、社会全体が変わっていく必要があります。この読書会を通して少しづつ理解を深め、変化を起こしていかれるきっかけとなることを願います。

これからも、家庭内はじめ様々な場面での役割について議論を行い、ジェンダーロールを乗り越えるための具体的な方法を模索していきたいと思います。

まとめ:ダンシロウ



参考文献:

1.「ケアの倫理」岡野八代 (おかのやしろ) 著

女性や弱者が担ってきたケア労働の社会的・政治的な評価の低さを問題提起し、ケアを中心に据えた新たな社会の在り方を提案している一冊。

著者紹介: 
日本の政治学者で特にフェミニズム理論や政治思想、ケアの倫理に関する研究で広く知られている。1967年生まれ。現在、同志社大学の法学部教授を務めています。


2.「パパの家庭進出が日本を変えるのだ」 前田晃平(まえだ こうへい) 著

父親が家庭でのケアや育児に積極的に関与することで、家庭内のジェンダー平等が進み、結果的に職場や社会全体においても男女平等が促進されると具体的なエピソードやデータを交えて説かれている本。

著者紹介: ジェンダー研究や社会学を専門とする日本の研究者で、特に男性の育児参加や家族におけるジェンダー平等に関する研究で知られています。子どもの権利を守るNPO所属。



次回の課題図書:

「あれも家族これも家族 個を大事にする社会へ」
福島瑞穂(ふくしまみずほ)著


 
 
 

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